おまけってか、ただ書きたかった超小話。
(クリーフ視点)
あー、すっごくイライラするなぁ。
それもこれも…
「きゃ〜!ルーウィンさま〜!!」
「ルーウィン博士!私、博士のためにベリーパイを焼いてきたんです〜!受け取ってくださ〜い!」
「あぁ〜、ズル〜い!私のプレゼントも受け取って〜!」
「わ、私のもぜひっ!」
「おやおや、ケンカは良くありませんよ」
「「「「♪きゃ〜!!!♪」」」」
教団の吹き抜けホールでルーウィンさんに纏わり付くアイツら。
あの人たち、ルーウィンさんがここを通る度にルーウィンさんを取り囲んで研究の邪魔をするんだ。
ルーウィンさんのファンクラブとか言うんだったら、あんな得体の知れないお菓子や邪魔なアクセサリーじゃなくて、腕の一本でも研究材料にくれた方がルーウィンさんは遥かに喜ぶのに。
ルーウィンさんもルーウィンさんだ。
なんで毎回しっかり相手しちゃうかなぁ…
あぁ〜、イライラする。
今、吹き抜けの下に降りたら、アイツらの何人かに毒針でも刺したくなってくる。
だけど、ルーウィンさんからはそんな事するなって言われてるしなぁ…
でも時間も迫ってるし…
こうなったら、またやるしかないかぁ…
「ル〜ウィ〜ンさ〜ん、もう5分も予定過ぎちゃってるんだけどぉ〜!」
「あら?またあの子ですわ」
「私、あの子きら〜い。いっつもエラそうだし、ルーウィンさまにも馴れ馴れしくしすぎよ!」
「分かる〜。もうちょっとルーウィン博士を敬うべきよ!」
「まぁそう言わないであげてください。少々態度は悪いかもしれませんが、彼なりに私の研究をサポートしてくれているだけですから。それに、彼が私の研究を手伝ってくれるからこそ、皆さんとお話しする時間ができているのですから、あまり悪く言ってはいけませんよ」
「きゃ〜!ルーウィンさまったら、お優しい!」
「私、もっと惚れてしまいますわ〜」
「頭も良くて優しくて、それでいて注意をする時すら気遣いを忘れないなんて…!さすがルーウィン博士ぇ~」
今日のヤツらはしつこいなぁ…!
1人くらいやっちゃって良いかな…
あ、ダメだ。
あのルーウィンさんの目は〈手出しするな〉って目だ。
「それでは、私はそろそろ仕事に戻らなければ…」
「えぇ〜、もう行っちゃうんですかぁ?」
「やだ〜、もっとお話ししたいです〜!」
「それは私も同じですが…私が研究の手を止めれば、皆さんの安全な生活を守る発明が遅れてしまいます。心苦しいですが、今日はこの辺りで失礼させて頂きます」
「「「きゃ〜!ステキ〜!!」」」
やっとルーウィンさんがアイツらから離れようとすると、またアイツらは口々にルーウィンさんを引き留めようとしてくる。
そもそもルーウィンさんには、アンタらに構ってる暇なんて無いんだから、さっさと消えてくれないかなぁ。
まぁ、そもそも頭の回転が違いすぎて口でルーウィンさんに勝つなんてまず無理だから、結局はルーウィンに言いくるめられてるんだけど。
それと、ルーウィンさんが離れる時に奇声をあげられるの、耳が痛くてさらに嫌になる。
「クリーフ、ちょっと手を貸してください」
「は〜い、今行きますよぉ〜」
やっとアイツらから抜け出したルーウィンさんは、アイツらに渡された〈貢ぎ物〉の荷物持ちを僕に言付けながら、吹き抜けの下から研究棟へと向かって行く。
面倒だけどルーウィンさんに頼まれた事だし、僕は僕で吹き抜けの下を通らないルートを使って急ぎルーウィンさんと合流する。
「ルーウィンさん、あんなの放っておけば良いのに」
「そう出来れば良いのですが。アレでも役に立つ事もあるのですよ。そんな事より、予定を5分もオーバーしてしまいました」
「それなら大丈夫。まだ10分前なんで。あ、ルーウィンさん。とりあえず邪魔だし、そのゴミこの袋に入れちゃってよ」
「ははは、キミからしたらゴミですか」
ルーウィンさんは僕のゴミ発言にケタケタと笑うけど、納得いかない僕はルーウィンさんに反論した。
「いっつも裏で売ったり捨てたりしてるんだから、ゴミと一緒じゃん」
「たしかに、違いありませんねぇ」
僕の反論にも、ルーウィンさんはクツクツと笑って同意してしまう。
この人、僕の言い表し方が面白かっただけか。
まぁ、ルーウィンさんが楽しそうだから良いけど。
「ついでに、その処分もお願いします。いつも通り、売った利益はキミのポケットに入れて構いません」
「別に、今の給料も持て余してるから要らないんですけど〜。むしろ〈あっち〉の研究費に回したら?」
「おや、面倒をかける分のボーナスのつもりでしたが、要りませんか」
そしていつもどおりにこの〈ゴミたち〉の処分を頼まれた。
ルーウィンさんはいつも、それで出た儲けを僕にくれる。
だけど僕は、研究が出来る最低限のモノや環境があれば良いと思ってるから、そのルーウィンさんの好意を断った。
そしたらルーウィンさんはちょっとだけ残念そうな顔をして何かを考え始めた。
でもルーウィンさんは、それからほんの数秒後には何かを思い付いたらしく、楽しそうな顔で軽く手を叩いた。
「では、その売価を元手にしてキミの新しい白衣と研究者用の団服を作りましょうか」
「えぇ〜、ルーウィンさんのお古でも十分だけど」
「その服装では、研究の定期報告会には出られませんよ。私としては、キミが報告会の方も手伝ってくれればもっといろんな研究が出来るかと思ったのですが…そうですか、要りませんか」
「え、本当!?もちろんその研究にも、僕をまぜてくれるんだよね!」
「無論、そのつもりですよ」
「それなら話は別!さっさと仕分けて売って来まぁ〜す」
「本当に、研究熱心ですねぇ」
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